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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)2967号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、請求原因第一、二項の事実および原告が本件事故により頸部症候群の傷害を被り、はじめ大和田診療所に通院し、ついで西淀病院に入院してそれぞれ治療を受けたことは当事者間に争いがない。

二、<証拠>を綜合すると、つぎのとおりの事実を認めることができる。

原告は、有限会社春日出鉄工所に勤務し、配管、熔接工として稼働していたが、本件事故の際、眩暈で一瞬眼前が暗くなる程度の衝撃を受け、事故当日である昭和四三年七月二二日夕刻には頭重感、頸部痛、吐気等をもよおして来たので、即日前記大和田診療所に赴き診察を受けたところ、頸部挫傷と診断され、翌二三日から勤務先を欠勤し同年八月一六日まで前後二一回にわたり同診療所に前記のとおり通院して治療を受け、その間はじめは前記症状も漸減の方向に向い、同月三〇日から出勤をはじめたが、同年八月初旬ころからは全身倦怠、頭重、眩暈等の症状が発現し、あるいは、歩行の際等意に反して右斜めに進むようになり、同月五日から再び欠勤していたところ、同月一〇日ころからはさらに両眼がかすむようになり、症状が増悪して行つたので、同月一二日から西淀病院へも通院するに至つていたが、同月一七日には転医し、同病院に入院して治療を受けたところ、その後経過がほぼ良好であつたため、入院二九日間で同年九月一四日退院し、引き続き前記勤務先を欠勤のうえ繁頻に同病院に通院して治療に専念していたが、そのうち担当医師から軽作業に就くよう指示されたので、昭和四四年六月から出勤のうえ軽作業に従事してみたところ、烈しい頸部痛、頭部痛等に見舞われることがしばしばで、症状悪化の気配があつたので、同年八月から再び欠勤して治療にあたり、そのころ右痛み除去を目的として左小後頭神経切除術を受けたが根治するに至らず、退院後約一年を経過し、その間の治療実日数二一〇日になんなんとした同年一〇月三日当時においては本件事故に基づく後遺障害として前記症状のほか、耳鳴り、聴力の低下、頸部の運動制限が遺り、右聴力の低下は、右四八デシベル、左四九デジベルで、普通の対話には一応支障を来さないが、囁声程度の聴取になるとやや困難を覚える程度の低下を来し、また、頸部の運動制限は、前後屈一〇五度、側屈六〇度、回旋一〇五度の程度であつて、これら各種の後遺症状は、同日ころまでの治療経過に照らし、当時すでに今後治療を継続してももはや早急に軽快の方向に向うとは考えられない状態、すなわち、いわゆる症状固定の状態に至つていた。

しかしながら、原告は、右後遺障害の軽快を目指してその後も右病院に頻繁に通院して、薬物、理学療法等のほか、鍼治療、徒手ないし機械による変形矯正術による治療を試みたが右症状固定のころから昭和四六年一一月三〇日まで二年二箇月間の診療実日数約四三〇日にもおよぶ治療によつても右症状は格別増進もしなければ軽快もせず、なお、その間同年八月からは右通院の傍ら週四日間程度午前中のみ前記勤務先に出勤して軽造業に従事しているが、依然頭痛、手のしびれ感、眼の疲労のため作業困難を訴え今日に至つている。

以上の事実が認められるのであつて、右認定のような受傷により原告は、以下認定の損害を被るに至つた。

(一) 治療費金一、〇五四、六二〇円<証拠>を綜合すれば、原告は、前認定の大和田診療所への通院治療費として金五七、八一〇円、また、前認定の昭和四三年八月一二日から前認定症状固定のころである昭和四四年九月三〇日までの西淀病院への入通院治療費として金七四六、八一〇円、さらに翌同年一〇月一日から原告主張の昭和四六年一一月三〇日までの同病院への通院治療費として金一、〇九八、〇七五円をそれぞれ要していることが認められる。

ところで、原告の症状が昭和四四年九月三〇日ころ固定するに至つたものと認められること前認定のとおりである以上、同日以降原告においてさらに治療を継続してももはや早急に右症状の改善を期待し得ないであろうことはいうまでもないことであり、現に右症状固定のころから昭和四六年一一月三〇日まで二年二箇月間の実診療日数約四二〇日になんなんとする治療にもかかわらず症状に格別の改善をみなかつたことも前認定のとおりではあるが、さりとて、たとえそれが固定した後遺症状であるとはいえ、原告に前認定のような頑固な神経症状等が存在していた以上、右症状固定後の治療をもつて全然不必要な治療であつたと目することができないのは当然であり、証人黒岩純の証言によたば、原告の担当医師も右治療が必要であると考えてこれを行つたことが認められる。

しかしながら、西淀病院にかぎつても、原告は、すでに認定したように昭和四三年八月一二日から前記症状固定のころまでの一年一箇月余の間に入院日数二九日、通院実日数約二一日を数える手厚い治療を受けていたほか、治療の方法にしても、前記甲第一六、一七号証によれば、いわゆる鞭打ち症に対するそれとして決して粗略なものではなかつたこと(なお、注射だけをとつてみても、診療実日数一日につきほぼ一本に匹敵する合計二二七本が使用されている。)が窺われるから、このような治療にもかかわらず前記のとおり症状が固定するに至つていた以上、その後における症状改善の見込みのない単なる対応治療については、その症状の程度に照らし自ら限度があるものといわなければならず、原告の場合前認定の後遺症状の程度に照らすと前記症状固定後は前後平均して一週間一回程度の通院で我慢するのが相当であると認めて差し支えなく、ひいては、前認定の症状固定のころ以降の治療費金一、〇九八、〇七五円については、遅延損害金の起算日等をも考慮に入れそのうち四分の一弱に相当する金二五〇、〇〇〇円をもつて本件事故と相当因果関係のある治療費と認めるのが相当であり、これを超える部分については被告らに対し賠償を求め得ないといわなければならない。

(小酒礼)

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